Europe’s Piecemeal Failure ヨーロッパのその場しのぎな失敗

別のブログで4月24日に掲載した、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンの記事の翻訳とそのブログからのコピペ文です。まだまだ翻訳(というか日本語?)の練習中でみにくい日本語で恐縮ですが、練習を重ねてもっとスムーズなきれいな日本語で訳文作れるようになりまーす!

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ヨーロッパ諸国の財政危機に興味を持ち、リサーチをしているのだが、そのきっかけになった記事。最初に読んだときは「なるほど」とあっさり納得してしまったのだが、少し勉強して読み直すとつっこみどころ満載なことに気づけて、その自分の成長が嬉しい記事。

翻訳するという作業を通じて自分が言語の問題ではなく、知識不足のため分からないところが明確になり、財政危機を理解することの手助けとなった。

記事は昨年12月5日付け、元イギリス財務大臣であるアリステア・ダーリン下院議員によるもの。元財務大臣なのにこんな記事執筆してて大丈夫なのか。イギリスの政治家なので結局欧州大陸での出来事は他人事なのでしょうかねぇ。。

私はインターナショナル・ヘラルド・トリビューンの記事を読んだのだが、講読していないとオンライン版は読めないみたいなので、以下ニューヨーク・タイムズの同じ記事へのリンク。(NYTでは12月5日付け)

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英語原文 New York Times 2010年12月5日 Europe's Piecemeal Failure


「ヨーロッパのその場しのぎな失敗」

アイルランドの救済やヨーロッパ大陸の他の場所でも起ころうとしている危機についての議論など、今日ヨーロッパで起こっていることについて考えると、2008年の金融危機が起こるまでの数週間を思い出す。信用の収縮が始まり、銀行にとって資金調達がますます困難となった中で、政策立案者たちはある選択に迫られていた。それは、この問題にその場しのぎの対応をするのか、あるいは、問題の根源に早急に対応するのか、というものだった。

あまりにも長い間、政策立案者たちは逃げの対応をすることを選び続けた。すなわち、彼らは問題について銀行ごとに取り組み、制度の基本的な欠陥を認識することを拒否した。結果として、リーマン・ブラザーズは倒産し、ベア・スターンズは格安で買収され、イギリス主要銀行が倒産寸前にまでなった。

あの夏、私は、危機の拡散を避けるために防火壁を設置しなければ、金融業と経済のさらに広い部分において大危機が起こることになると悟った。なので私は金融制度を安定化させるために数十億ポンド注入という議論の多い対策をとった。銀行における資本不足という基本的な問題に取り組むことによって、メルトダウンを阻止したのであった。きびしい行動ではあったが、効果があったことと確信している。

同じアプローチが緊急的に今ヨーロッパ各国の経済にとって必要である。ユーロ圏の国々にとって、各国経済が危機に陥る度に救済策を打つことは十分な対応ではない。大陸ヨーロッパにおける問題の根本的な原因に対する対応がなされなければならない。

しかし、今までなされている対応は原因に対して根本的に対応するようなものではない。5月にヨーロッパはギリシャを支援しなければならないという事実に直面した。ギリシャは、国の借金をうめるために必要なだけのお金を借りることが非常に困難な状態となっていたのである。しかしながら、救済措置がとられるにはあまりにも長い時間がかかり、また問題に最終段階を迎えさせたことには米国財務省が大きく貢献した。結局、財政支援のおかげで差し迫った危機は解消され、時間稼ぎをすることが可能となった。しかし、稼いだ時間は過剰に債務を抱えたヨーロッパ各国の経済に対処する、根本的な対策がとるために使われることはなかった。

そして、一週間と少し前、新たな危機が発生した。アイルランドは助けを必要とするほど、自国の銀行の負債が大きいことを認めなければならなくなっていた。EUIMFは緊急援助計画をもって介入し、再度、差し迫った危機は避けられた。

しかし、アイルランド財政支援によってユーロ圏危機は悪化をのがれたかというと、とんでもない。ポルトガル、スペイン、そしてイタリアまでもの債権利回りが上昇。これは、まだ問題が残っている可能性を濃厚に示すものである。

何よりもユーロ圏問題は通貨同盟の基本的な断層線をあらわにした。ユーロ圏は共通の通貨を利用しているが、通貨同盟を支える政治、経済同盟は加盟国間の意見の相違や困難を解決するための決定的な措置をとるために、限定的な能力しか認められていない。その結果が経済危機に平行して起っている政治危機である。そこで評論家たちは、完全なる政治的統合かユーロ圏の崩壊という二つの選択肢しかないかのように論じている。しかしながら、前者が起ることはない。また、後者の選択肢はより痛みを伴い、ヨーロッパを不安定にさせるような問題を引き起こす。どちらの選択肢でもなく、金融危機と同様、危機の拡散を防ぐためにヨーロッパは防火壁を建設しなければならない。

これには、二セットの措置が必要である。まずは、事態を安定化させるための行動である。そのためには、欧州中央銀行は危険な状態にある国の国債を買う責任を負わなければならない。欧州中央銀行ギリシャ危機の際に行ったことはまさにそれだった。国債購入の責任を負うとの決定が債券市場における投資家の信用回復に大きく貢献した。しかしながら、それ以来、欧州中央銀行は、将来的に同様の措置をとるのかどうかについてはっきりしない態度を示している。(ただし、先週欧州中央銀行国債購入をある程度は強化した。)

欧州中央銀行は市場安定化のために今後も介入するという姿勢を明確に打ち出さなければならない。また、それ以上の措置をとるかどうかについても検討がなされるべきである。私は財務大臣としてイングランド銀行量的緩和を行うことを許可した。量的緩和は、マネーサプライを増加させることで行われたが、この措置は連邦準備銀行も二度とった措置である。

イギリスでの措置の成功にもかかわらず欧州中央銀行は同じ措置をとることを拒んでいる。しかし、これには再検討がなされるべきである。端的に述べると、昨今の低成長の中で経済的な底に落ちてしまえば、ヨーロッパの経済を立て直すことは不可能であるからだ。

ユーロ圏各国は持続不可能な債務を負っている銀行に対応する必要がある。昨年夏、ヨーロッパでは、どの銀行が倒産の危機にあるのかを調査するためストレス・テストとよばれるテストが実施された。しかし、これらのテストは不十分であった。実施されたテストは、ヨーロッパ内のみならずグローバルな銀行間の相互関係に十分に注意を払ったものではなかった。問題に陥った銀行は必要があれば再構築または解体される必要がある。

最後に、銀行が崩壊してしまったときのために、予防的措置に併せて緊急対策を強化する必要がある。アイルランドの銀行は結局のところユニークな存在ではない。これは、銀行のバランスシートを公開し、倒産の際にはどのような措置がとられるかを明らかにすることを意味する。リーマン・ブラザーズ倒産の際にこのような透明性が欠けていたことが、世界的な金融界の加熱につながった。誰が誰にいくら借りがあるのかということを誰も把握していなかった。

二つ目のセットはより長期的で、ヨーロッパが二つの基本的原則を受け入れることである。一つ目の原則は緊縮財政政策のみでは効果がないということである。デフォルト(債務不履行)の危機にある国に赤字を縮小させ、政府支出を削減することだけを要求することは十分ではない。このような措置は自滅的である。痛みの大きい、デフレ・緊縮経済政策を課すことは借金返済と経済回復に必要な経済成長を妨げさせてしまう。

今日、ヨーロッパの緊縮経済政策論者のあまりにも多くが事実上その地位を確固たるものにしている。彼らの解決法は銀行一行ごとに対処するのと類似している。すなわち、彼らの解決法は、大きな問題の一部分のみに対応する、ごまかしの解決法である。

本当に必要なのは、バランスのとれたアプローチである。それは、赤字を早急になくすが、各国の経済的あるいは社会的構造を破壊しない方法で行われるものである。赤字削減のペースは、民間部門の景気停滞から抜け出す能力に対応する必要がある。

二つ目の原則は大きな債務負担を抱える国々は財政支援以上の援助が必要であるということである。国々が崩壊している銀行のバランスシートを国有化した後では、このような国々が将来的に債務を返済できるようになるという希望を市場がもてなければならない。

危機にある経済の消費者はお金を使うこともさらに借りることもしたくなくなる。企業も投資に慎重になるだろう。したがって、成長と国の借金返済手段は輸出によってもたらされることとなる。

これは、中期的には、危機にある国々の需要縮小にバランスをとるためより広いユーロ圏の国々が出費を増加させなければならないということを意味する。しかしながら、残念なことに、これとは反対のことが起っている。ヨーロッパの主要国は自国の緊縮財政を実施し、輸入に対する需要を縮小させている。このような措置は周辺国を追いつめ、財政支援あるいはその他の支援などによる手に負えないほどの送金による支払いが不可避となる危険にさらされてしまう。

私は成長がどのようにもたらされるかと聞くと分からないと答える多くのヨーロッパの政治家と話してきた。しかし、進むべき道が明らかでないのであれば、ヨーロッパの競争力のある国の成長も最小限となるだろう。また、すでに危機的状況にある国の成長は悲惨なものとなるだろう。

このままではいけない。ユーロ圏における危機は、少しずつ回復しかけている世界経済にとって唯一最大の障害となっている。そして、これはヨーロッパの問題だけではない。我が国イギリス、そしてアメリカとアジアにとっても重大である。

昨年ロンドンで開催されたG20会合では、参加国は国際金融制度を安定化と世界経済の活性化に合意がなされた。さらなる合意が6ヶ月後ピッツバーグでなされた。ピッツバーグには必要な行動をとることについて偽りのない政治的意思がみられた。

あの時の勢いは今や失われてしまい、勢いが取り戻されるには主要国のより強力な関与が必要である。危機の根源に立ち向かう決定的な行動が今緊急である。

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アリステア・ダーリンはイギリス下院議員であり、2007から2010年にはイギリス財務大臣を務めた。