ブリュッセルでの行き詰まりを打開するには

Breaking a Brussels Logjam
ブリュッセルでの行き詰まりを打開するには

ブリュッセル
Herald Tribune
2010年10月19日
Ivo H. Daalder

原文記事 New York Times

NATOEUは共通の目的を達成しようとしているが、二組織間での協力は行われたとして行き当たりばったりのものである。

「ヨーロッパの首都」から何千マイルも離れたところでNATOEUは協調して同じ安全保障上の目的を達成しようとしている。しかしブリュッセルにある二組織の本部間の4マイルに橋がかけられることはめったにない。その結果、私たちの取り組みは可能な、そしてあるべき姿よりはるかに実効性が低い。

アフガニスタンにおいて、NATOEUは同じ目標を有している。それは、アフガニスタン政府が安定、安全そしてグッド・ガバナンスを実現し、また、過激派による脅威を排除する能力を向上させるというものである。ソマリア沖ではNATOEUの船は海賊行為という害悪に対処するために同じ海を巡回している。バルカン半島でもNATOEUは同じ目的を追求している。かつて戦火により荒廃した地域を欧州・大西洋統合、欧州統合の過程で支援しているのである。

しかし、NATOEUの政治組織間の対話はどのような実用的な目的についても存在しない。戦略の調整、あるいは、一方の組織の決定がどのように他方の組織に影響を与えることになるかについての議論は、もしなされるとすれば行き当たりばったりにしかなされない。

例えば今年。NATOEUの加盟国の高官たちは戦略協議を正確に一度だけ行った。そして、その協議での議題にあったのはボスニア・ヘルツゴビナのみだった。ボスニアはもちろん重要課題である。しかし、NATOEUの共通の関心事はもっと広い。

例えばNATOコソボ部隊とEUの法の支配派遣団は、両者ともコソボで活動している。NATOEUは新しく誕生したコソボという国に治安に関する責任移譲のための戦略を共同で策定すべきであった。しかし、NATOEUは次のステップを別々に練っている。

より能力が高いプロフェッショナルな治安部隊を編成するために、警官訓練のための人材が切に求められているアフガニスタンについても考えてみてほしい。訓練作業を調整するのではなく、NATOEUは両方とも二重に警官の訓練を行っている。

ソマリア沖では、NATOEUは命令系統の異なる別々の二つのミッションに取り組んでいる。対海賊行為に関する政策決定は別々に行われ、この機能障害への対応は外洋を航海する船長たちに任されている。共同の戦略に関する対話の欠如は、ブリュッセルで達成されるべきことをNATOEUの職員が現場で乗り越えざるを得なくさせている。

戦略的に協力がなされないことの代償は、コストの大きな二重の取り組み、調整の欠如、そして、NATOEUの能力を最大限に活かす補完的なアプローチをとることの失敗である。元NATO事務局長がかつて「職務怠慢に近い」と表現した、この状況は、特にこの耐乏の時代において誰も享受する余裕のない非効率性をつくりだしている。

二者の関係を戦術上の便宜から戦略的パートナーシップへと変えるための機会は最も熟している。人命、予算、安全が危機にさらされている中、今が行動を起すべきときである。

フランスは自国をNATOの軍事機構に再統合させた。リスボン条約はより強く、より域内で団結力のあるEUを約束している。そして、11月にNATO加盟国の首脳たちにより承認される予定の大西洋同盟の新しい戦略概念は全ての国々の安全と繁栄を強化するためのNATOパートナーシップの役割を認める。NATOEUはこの議論の高まりを足場とすべきである。NATO事務局長Anders Rasmussenは政治的行き詰まりを押しやり、作戦における協力、能力開発、そして戦略協議を強化するための確かな計画を持ち合わせている。これは全てのNATOEU加盟国に恩恵をもたらすものである。アメリカも彼のアプローチを強く支持している。

我々はEUのアイディアにも関心がある。ともに成功することは極めて重要である。従って、より密な協力関係への推進力はNATOからのみくるべきではない。変革への要求は同等に大きなEUのサイレンによるものでもなければならない。それは特に、両方の組織に加盟する21の加盟国からでなければならない。

NATOEUの能力は協調関係になければならず、それぞれの取り組みは補完的なものでなければならない。幅広い共通関心事について、定期的にしっかりとして透明な意見交換を行うべきである。政策は現場での職務を支えるものであるべきであり、危険な状況にある者たちはブリュッセルにおける失敗に対応することを必要とされるべきでない。

協力的で熱心なパートナーたちはこれらのジレンマを解決することができ、そこから恩恵を受けるのは加盟国の国民である。結局のところ、加盟国国民は多数の多様な安全保障にかかわる課題に立ち向かわなければならない。もし我々が国外での取り組みをうまく調和させることができれば、我々は共に国家安全保障をよりうまく向上させることができるだろう。

今日の、グローバル化し、複雑で予測不可能な安全保障をとりまく環境においては、どの国も、そしてどのような組織も、孤立することはできない。政治的な行き詰まりをとくことは全てのNATOEU加盟国にとって利がある。バルカン半島アフガニスタン、そしてアデン湾で職務についている我々の人員はその教訓をすでに得た。今度は彼らが学んだことをブリュッセルに持ってくる番である。

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IVO H. DAALDERはアメリカの北大西洋条約機構常任委員である。